劇団チョコレートケーキ 『つきかげ』

劇団チョコレートケーキ

『つきかげ』


脚本:古川健演出:日澤雄介

出演:緒方晋、浅井伸治、西尾友樹、帯金ゆかり、宇野愛海、岡本篤、音無美紀子



千穐楽に観劇して参りました。


ビリリと破かれた舞台背景から浮かぶ、日常・家族・人生の一部。

破り切り取られた中で経つ数日は、誰も知らない時間だった、のかもしれない。


既に以前からあったように始まり、最後の背中は静かに、どこかで燃やされてしまった秘密の数日を垣間見た体感になった。


出演者陣の人格形成がなんて見事な…。同じ家族といえど他人、他人だけど他人ではない。関係性や個人の色があまりにも鮮やかで、お1人お1人が魅力的だった。人ってそういうもんだものね。

家族/兄妹間でのユーモアもたくさん。和やかで、でもふいに突きつけられる現実に何度も込み上げるものがあった。

亡くなった祖母を思い出すようで。

最期、孫の私を認識できなかった祖母。

目の前にいたことを分かって欲しかった祖母。

茂吉は、家族の中で、詩の中で、言葉の、いや国語の中で、きっと最期までいられたのだろうな。

3人の背中が、決して哀しいものではなかったと、私個人は感じました。


なにより、

時計の秒針の音には震えました。

本当に本当に“気が付けば”鳴っていた音。

まるで私自信が、あの家の一部としていたかのような。

家具の一部だったのかもしれない。家の壁だったかもしれない。

それぐらい取り込まれていた感覚に、秒針の音が誘ってくれた。


劇チョコの皆様は変わらず、けれど、益々骨太な芝居と出立ちに魅入るばかり。

まるで兄妹。まるで家族。同様。


女性陣の皆様も本当に素敵で!なぜ、あの雰囲気がパッとつくられるのか。男性陣よりもカラリとした明るさ。実直さ。


“老い”と“死”。“いつも”じゃなくなったときの、焦燥感。

何者になれるのか、なるのか。歳を重ね、考える機会が増えるし免れない問題をいち歌人、ひとつの家族を通して目の当たりにして。

悶々と考えるより、お母様のスタイルに救われながら正解なんて出ないし無いのだけれど。幸せな瞬間とはこんな風景、とポツリ思いました。


最後の最後にスッと立ち短歌と詠む茂吉の姿が強烈に焼きついた。

最期まで、彼は、そして誰しもが、生涯現役で生きる人間なのだなぁ。

とても美しかったな。


考え始めるとクソ重たい問題ではあるけれど、思い出される印象はとても明るい。


観劇できて本当に良かったです。

梨の日

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